現在の日本における肥満の定義はBMI 25kg/m2以上とされているが、これは約30年前の横断研究の結果に基づくものである。そのため、現在における妥当性については議論の余地がある。そこで、京都府立医科大学大学院の笠原 健矢氏らの研究グループは、大規模な長期コホート研究のデータを用いて、現在の日本人における最適な肥満の基準値を検討した。その結果、BMI 22kg/m2を対照とした場合、2型糖尿病や慢性腎臓病(CKD)はBMI 25kg/m2付近でハザード比(HR)が2を超える一方で、冠動脈疾患(CAD)や脳卒中などのHRが2を超えるのは、BMI 30kg/m2超であった。本研究結果は、Metabolism誌オンライン版2025年7月15日号に掲載された。
本研究は、2008~23年にかけてパナソニック社の健康診断を受けた40歳以上の16万2,136人を対象とした。ベースライン時のBMIと追跡期間中における疾患(2型糖尿病、CKD、高血圧症、CAD、脳卒中、脂質異常症)の発症との関連について、制限付き3次スプラインを用いた多変量Cox比例ハザードモデルにより評価した。BMI 22kg/m2を対照とした場合の各疾患のHRが2となるBMIを推定した。
主な結果は以下のとおり。
・各評価疾患の平均追跡期間は6~8年であった。
・BMI 22kg/m2を対照とした場合、それぞれの疾患のHRが2となるBMI(kg/m2)は、以下のとおりであった。
-糖尿病:24.6
-CKD:25.0
-高血圧症:26.8
-CAD:30.8
-脳卒中:32.0
-高トリグリセライド血症:32.3
・これらの結果は、性別や年齢で層別化したサブグループ解析においても同様であった。
(ケアネット 佐藤 亮)